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俳優・古舘寛治さん 非難や懸念があっても「政治的発言」をやめない理由【注目の人 直撃インタビュー】

所属事務所提供(撮影/江森康之)

【注目の人 直撃インタビュー】

 古舘寛治さん(俳優)

 連日、過激な「寝言」を頻繁にツイートしている。その多くが「政治的発言」だ。芸能界からも批判の声が上がった検察庁法改正案にも、もちろん反対した。〈俳優なのに〉〈イメージが壊れた〉〈クズ役者!〉などと中傷コメントを書き込まれても、〈大根役者よりも酷そうだね〉といなしている。仕事に影響はないのだろうか。はたから見ている方が気を揉んでしまうが、本人はどう考えているのか。聞いてみた。

  ◇  ◇  ◇

 ――ツイッターのプロフィルは、のっけから〈俳優なので政治的発言はしません。が寝言で何か言ったりしてるそうです。本人は知りません〉。それにしても、激しい“寝言”を連投していますね。

 恐縮です。みんな、もっと言っていいんじゃないの、と思いますけどね。

 ――安倍政権が検察人事の掌握を狙った検察庁法改正案に対する反発は芸能界にも広がり、世論のうねりにもつながって廃案になりました。

 小泉今日子さん、きゃりーぱみゅぱみゅさんが「#検察庁法改正案に抗議します」とツイートして声を上げ始めた時、これはすごい流れになるんじゃないかと期待したんです。ところが、フタを開けてみたら、(芸能人で反対表明したのは)数える程度。稼がずに生きていける大先輩たちが黙っていたのは残念でならないですね。あんまり言うと、怒られちゃうけど。

 ――芸能人の政治的発言はタブー視される風潮が改めて可視化されましたが、やはり視線は厳しいですか。

 芸能人は人気商売なので、敵をつくることは何ひとつプラスになりません。ただ、僕は彼らを非難したいわけではないんです。日本の場合、仕方のない側面がある。映画だけで食える俳優はたぶん、ひとりもいない。主演クラスでもCM出演で稼いでいるんです。テレビドラマにはスポンサー企業がついている。下手な発言をしたら注意されますよね。政治的な発言を好まない国民性、それに仕事上のシステムの問題もあって、言わないのが当たり前になっている一面があると思います。

 ――二重に縛られているような状態なんですね。

 政治的発言で批判されることもあれば、評価されることもある。応援してくれる人が増えることもある。プラス面をとらえて起用するスポンサー企業がいくつも出てくれば、状況は変わると思いますよ。米国では政治的なパフォーマンスをしたスポーツ選手を大企業があえて起用することもあります。

■上関原発めぐりテレビ局に抗議メール

 ――SNSを始めたきっかけは?

 2010年にチュニジアで起きたジャスミン革命です。フェイスブックで火が付いたと聞いて、社会を揺るがす大きな出来事がSNS発で起きるのかとビックリした。もともとデジタルが苦手で、パソコンもスマホも誰よりも遅かったんですけどね。始めてみたら、海外の情報が入ってくる一方、日本のメジャーメディアが報じない国内の情報もたくさん入ってくる。

 例えば、山口県の上関原発建設計画。地元では建設推進派と反対派が長年対立していますよね。ある時、中国電力が動員した民間警備員と反対派住民が小競り合いしている映像を見て、怒りを覚えてテレビ局にメールしたんです。〈なんでこの問題を報道しないのか〉と。そうしたら、〈優先順位を考えて報道している〉という趣旨の返信があった。いやいや、優先順位は絶対こっちが上だろうとモヤモヤしていたところに、東日本大震災が発生し、原発事故が起きた。

 それまで原発についてはどちらかといえば反対くらいの考えだったんですが、その時はホレ見たことか、という感じがあって。怒りが増幅されて、その頃からどんどんツイートしてますね。

周りからは「やめとけ」「やめてくれ」と言われる、だけど…

 ――ツイッターで絡まれるとしんどくないですか? コロナ禍をめぐり、日本俳優連合理事長の西田敏行さんが政府に対し、俳優が支援の輪から外れていることを訴え、対応を求める要望書を出すと、ネット上で「ズルい」「身勝手だ」などとバッシングに遭いました。

 周りからはやめとけ、やめてくれって言われますね。やっぱり家族からは言われますね。著名人が政府に批判的な発言をすると、フザケルナと言う人が出てくるのは、ルサンチマンと言えばいいのか。報われない思いがあって、社会に対する恨みを抱えながらそれを表現することができず、生きていかざるを得ない人が相当数いるんだろうな、と感じます。オレらからすればオマエらは全然恵まれてるよ、ということなんでしょうか。権威主義がキーだと思うんですよ。

 ――権威主義はファシズム的兆候とも言われています。

 集団の中でしか生きられない人間はそもそも、権力におもねる権威主義的な生き物。権力に逆らう人間を疎ましく思ったり、権利を主張する人間を「うるせえ、バカヤロー」と批判するのも自然なことなんですよね。

 こう思うんですよ。やるべき仕事が全くできない安倍政権が長く続いているのは、安倍首相がものすごい力を持っているわけじゃない。彼があのポストにいることで、得する人間がいっぱいいる。周囲の権威主義者たちがそれを支えている。

 例えば、経団連もそのひとつですよね。アベノミクスは大企業に有利な政策だから。そういう人たちにとっても、政権批判する人間は面白くない。人間は放っておけば権威主義になり、お任せ政治が当たり前になり、無関心が独裁を引き寄せてしまう。この国ではマトモな人間ほど黙り込み、我慢してしまう。日本は危ない、本当に危ない。教育が大事だとしみじみ思います。

 ――安倍政権は右傾化の教育改革に熱心です。

 欧米の徹底した民主主義教育はすごいですよ。民主主義という概念が自然にあるものではなく、いかに人工的に育んでいくものなのか。フランスで暮らす友人の娘さんが通う小学校には「子ども議会」があるそうなんです。選出された「子ども議員」は週1回程度、地元の市議会議員と会議を持って自分たちの政策を発表する。

 例えば、市場を開きたいという提案が通れば、市の予算で実現できるんです。娘さんに「いま何に興味ある?」って尋ねたら、「ダンスと政治」だと。フランスの別の友人の高校生の息子さんにも同じ質問をしたら、「演劇と政治」って言うんですよ。「なんで政治に興味あるの? お父さんと話すの?」と聞いたら、「違うよ。デモに行くでしょ」って言う。

 まずそこからビックリするんですけど、フランスの高校生は普通にデモに行くんですね。それで、「デモに行くと、大人も子どももいろんな人に出会って、話をするうちに自然と政治が面白いと思い始めた」って言うんです。民主主義が若者の生活の根幹にある社会は、日本とは全く違いますよね。

■コロナ禍で撮影環境改善の兆し

 ――コロナ禍の影響はどうですか? 撮影が軒並み延期になったそうですね。

 最後の仕事が3月後半でした。それ以降、撮影はすべて延期。緊急事態宣言が出て以降はずーっと仕事がない状態でした。宣言が解除されて、ようやく再開され始めたところです。先日の衣装合わせはコロナ仕様でしたね。入り口にはアルコール消毒液が置かれて、スタッフはみなマスクと手袋をして、距離を取りながらでした。キスシーンとか、どうなるのかなあ。アクリル板を立てて撮るのかなあ。いま一番、ツライところなんです。

 コロナ禍の前から撮影していた作品の続きを撮っていて、そこに「新しい日常」を取り込もうとすると中途半端になる。本当はみんなマスクしていないといけないわけでしょ? 僕みたいな俳優ばっかりだったらマスク着用で問題ないと思うけど、みんなイケメンとか美人を見たいわけだから。いくらリアルといえど、見る方は嫌でしょう。

 一方で、期せずして僕たちが訴えてきた労働環境の改善が実現する兆しが見えてきました。日本では契約書を交わさないまま撮影に入るのが慣例。出演料は事後交渉で、撮影時間もいくらでも延長できる。それがコロナ禍で1日あたりの撮影時間が短縮され、期間を長くする方向になってきた。俳優もキツイですけど、ロクに睡眠も取れないスタッフはもっと大変なんです。ただ、お金の問題はどうなるんだか……。

(聞き手=坂本千晶/日刊ゲンダイ)

▽ふるたち・かんじ 1968年、大阪府堺市生まれ。23歳から5年間、米ニューヨークで演劇を学ぶ。帰国後の01年、劇団青年団入り。07年放送の英会話スクール「NOVA」のCMで話題に。映画「淵に立つ」、ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」「逃げるは恥だが役に立つ」など出演作多数。ドラマ「コタキ兄弟と四苦八苦」で主演。

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